営業や恋愛など、使える心理学のテクニックを知りたい。
一貫性の原理ってなに?
そんなあなたに向けた記事です。
「イエス」と相手に言わせれば本命の「イエス」を引き出せる。シンプル極まりない心理学の手法であるイエスセットについて解説します。
もちろんそんな単純にうまくいくわけはないので、注意点やその他のテクニックの活用など、例を示しながら解説していきます。
一貫性の原理との関連やその他の心理効果、ラポール形成(信頼関係の形成)など、内容は多岐に渡ります。ぜひ最後までお付き合いください。
✔本記事のテーマ
【イエスセット】営業や恋愛に使えるらしい一貫性の原理の例とは?
✔本記事でわかること
- イエスセットとは?
【意味/例/一貫性の原理/有効活用法】
イエスセットとは?
1.イエスセットの意味
まずは次のAさんとBさんのやり取りをご覧ください。Aさんがイエスセットを使っています。
Aさん:今日はあいにくのお天気ですね。
Bさん:そうですね。
Aさん:今日はお休みなんですよね?
Bさん:そうですね。
Aさん:そういえば映画が好きなんでしたっけ?
Bさん:そうですね。
Aさん:それでは映画を観に行きませんか?
Bさん:いいですね、行きましょう。
イエスセットは心理テクニックの一つで、相手が「イエス」という回答を繰り返すことによって、その後の要求や提案に対する抵抗を減らす効果があります。
「イエス」と言わせたい本命の質問の前に、必ずイエスと答えるだろう質問を繰り返して「イエス」を積み重ねることで、本命の質問に対する「イエス」を引き出す手法です。
イエスセットは望みを実現する手法として、コミュニケーションやセールスの場で活用されることがあります。
2.イエスセットの例
冒頭の例が、恋愛など人間関係にイエスセットを応用したものです。
その他にも子供に特定の行動を促すときにイエスセットが有効です。
例えば子供に片づけをさせたい場合……
Aさん:いっぱい遊んだね。
子供:うん。
Aさん:楽しかったね。
子供:うん。
Aさん:また遊ぼうね。
子供:うん。
Aさん:次遊びやすいようにおもちゃ片付けようか。
子供:うん!
色々応用ができそうですね。イエスセットの応用といえば、やはりセールスでしょう。一例を示します。
Aさん:1分ほどお時間をちょうだいしてもよろしいでしょうか。
Bさん:はい。
Aさん:スマホはお使いですか?
Bさん:はい。
Aさん:料金が高くてお悩みではありませんか?
Bさん:そうですね。
Aさん:それでしたらお得な料金プランがありますのでご案内いたしましょうか?
Bさん:お願いします。
いきなり料金プランの案内から入った場合、「いえ、結構です」となって話が終わってしまいます。
このように「イエス」を積み重ねることで、本命の「イエス」が引き出しやすくなります。
ただし、相手は人間ですから、必ずしも例のようにうまくいくわけはありません。
後ほど、イエスセットのうまい使い方を紹介しますが、まずはイエスセットが交渉事に有効である理由について説明します。
3.一貫性の原理
イエスセットは一貫性の原理(法則)の一種です。
一貫性の原理とは、人が自分の行動や態度を一貫させようとする心理的傾向のことです。
イエスセットでは、相手が「イエス」という行動を積み重ねることで、一貫した行動、つまり「イエス」という回答を繰り返しやすくしています。
もし途中で「ノー」と答えると、認知的不協和が生じ、質問の回答者には不快感が働きます。それを解消するために、一貫性の原理が働くと考えられます。
認知的不協和とは、人が矛盾する複数の認知を抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学の用語です。
「イエス」を積み重ねた場合、相手に協力的な自分が形成されます。もし「ノー」と答えると、協力的な自分に矛盾が生じてしまいます。
このような現象を利用して、本来「ノー」と答えるような要求を「イエス」に少しでも近づける手法が、イエスセットなのです。
4.イエスセットを有効に働かせるための方法
先ほどの例を思い出してみましょう。
Aさん:1分ほどお時間をちょうだいしてもよろしいでしょうか。
Bさん:はい。
Aさん:スマホはお使いですか?
Bさん:はい。
Aさん:料金が高くてお悩みではありませんか?
Bさん:そうですね。
Aさん:それでしたらお得な料金プランがありますのでご案内いたしましょうか?
Bさん:お願いします。
ここにはいくつかのテクニックが使われています。
①必ずイエスと答える質問をする
「イエス」を積み重ねるために、必ずイエスと答える質問をしましょう。
その質問には二種類あり、「誰でもイエスと答える質問」と「すでにイエスであることがわかっている質問」です。
上の例だと「スマホはお使いですか?」が「誰でもイエスと答える質問」です。
事前にBさんが料金を気にしていることがわかっている場合は、「お悩みではありませんか?」が「すでにイエスであることがわかっている質問」です。
②イエスを積み重ねる質問は3個まで!
イエスを積み重ねれば積み重ねるほど一貫性の原理は働きやすくなりますが、その数が多すぎると誘導尋問のようになり、相手に不快感を与えます。
一般的にはイエスを積み重ねる質問は3個が最適であるとされています。
③「ノー」に備えて質問をたくさん用意しておく
もしかするとBさんはスマホを持っていないかもしれません。その場合、次の「イエス」を引き出す質問を用意しておきましょう。
次の④と合わせて例を示します。
④ゴールは明確にしておく。
Aさん:スマホはお使いですか?
Bさん:いいえ。
Aさん:もしかしてガラケーですか?
Bさん:そうですね。
Aさん:料金的な問題ですかね?
Bさん:はい。
Aさん:もしかするとスマホのほうが安くなるかもしれません。
Bさん:ふむふむ。
Aさん:念のためスマホのお得な料金プランだけでも案内しておきましょうか?
Bさん:お願いします。
このように、質問が変わったとしても、ゴールを見失わないようにしましょう。
⑤本命の質問にも段階を設ける
上の例だと、契約するところが真のゴールでしょう。
しかし、いきなり契約の案内は聞いてくれないでしょうから、その前段階としての本命の質問を、料金プランの案内に対して「イエス」を引き出すことに設定します。
このように、本命の質問のハードルを下げることも重要です。そしてハードルを下げた質問をたくさん用意しておくと、仮に「ノー」が返ってきても、真のゴールに向けたルート変更をすることができます。
⑥他の心理学の手法を応用する
実は以下の最初の質問で、その他の心理学のテクニックを用いています。
Aさん:1分ほどお時間をちょうだいしてもよろしいでしょうか。
1分だけなら話を聞こうかな、そう思わせるような質問をしています。
これは最初の要求を低くし、段階的に要求を高くする手法で、フット・イン・ザ・ドア・テクニックといいます。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックはイエスセットと同じく、一貫性の原理に分類される心理学の手法です。
一貫性の原理にはとローボールテクニックというものもあります。
ローボールテクニックは、好都合の条件で承諾を得てから悪条件を取り付ける、あるいは好都合の条件を取り下げるという、詐欺的手法です。使わないようにしましょう。
以下、詐欺的手法への注意喚起をする記事とともに載せておきますので、よろしければご覧ください。
⑦ラポールを形成する
ラポールとはお互いに親しい感情が通い合う状態、打ちとけて話ができる関係のことです。
つまり、信頼関係を構築しましょうということです。
例えば「イエス」を引き出すこと夢中になった場合、相手に圧迫感を与えるかもしれません。
最短ルートで本命の質問にたどりつかなくてはいけないわけではないので、焦らず相手のペースや反応を尊重するようにしましょう。
おすすめの手法は相手への同調と、バックトラッキングです。
バックトラッキングは「おうむ返し」のことです。やり過ぎると馬鹿にしている印象を与えるので、ほどほどにしましょう。
以下、同調やバックトラッキングを組み合わせてみました。
Aさん:1分ほどお時間をちょうだいしてもよろしいでしょうか。
Bさん:はい。
Aさん:スマホはお使いですか?
Bさん:はい。
Aさん:どのようなスマホを使っていますか?
Bさん:●●●ですね。
Aさん:●●●ですか!私も使っているんですよ!
このように、相手に歩み寄りながらラポール形成をしていきましょう。
ラポール形成ができたならば、もはやイエスセットなどの心理テクニックに頼る必要はないかもしれません。
今回は以上です!
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