一貫性の原理とは?
イエスセット、フット・イン・ザ・ドア、ローボールテクニックとは?
認知的不協和とは?
そんなあなたに向けた記事です。
もうすでに飽きているのに、ついつい月刊誌を買い続けている。
たいして面白くない映画を、だらだら最後まで見続けてしまっている。
あるメーカーの製品を買い始めたから、すべてをそのメーカーで揃えないと気が済まなくなっている。
このような経験はありませんか?
ついつい続けてしまっている、気づいたら習慣のようになってしまっているものはありませんか?
このような傾向は、一貫性の原理によって説明できます。
今回の記事では、一貫性の原理について、心理学テクニックである「イエスセット」「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」「ローボールテクニック」とともに解説していきます。
また、「コンコルド効果」など関連する心理現象についても触れていきますので、本記事を読むことで様々な心理現象を一気に理解することができます。ぜひ最後までお付き合いください。
✔本記事のテーマ
【一貫性の原理まとめ】イエスセット、フット・イン・ザ・ドア、ローボールテクニック
✔本記事でわかること
- 一貫性の原理とは?
【意味/メカニズム/イエスセット、フット・イン・ザ・ドア、ローボールテクニック/認知的不協和/コンコルド効果など】
一貫性の原理とは?
1.一貫性の原理の意味とメカニズム
一貫性の原理とは、人が自分の行動や態度を一貫させようとする心理的傾向のことです。
一貫性の原理が働くメカニズムについて、3つの側面から論じていきたいと思います。
①社会性
だらだらとあるサービスを継続利用しているケースや、付き合いで参加している課外活動などを例としてイメージしてください。
人は一貫性のある行動をとることで、社会性のある人間に思われたいという傾向があります。一般的に、一貫した行動は信頼される傾向にあります。
一貫性のある行動をとることで、「筋の通ったぶれない人間」「こだわりのある人間」「優柔不断ではない人間」と思われたい心理が働くことがあります。
また、断ることで、相手に「嫌な奴に思われたくない」といったように、罪悪感が働くケースもあります。
②合理性
以下の事例をもとに解説します。今回はapple製品としましたが、ピンとこない方はご自身の好きなブランドに置き換えてください。
例:apple製品が好きで、スマホはiPhoneを使っている。イヤフォンはAirPods、端末としてiPadも持っている。
この例の場合、apple製品で統一することが合理的である場合があります。
人は一日のうちに何度も、選択に迫られます。特定の製品で統一することで、選択の回数を減らすことができます。
例えば時計が欲しくなった場合、最初からapple製品に選択肢を絞れば、ほとんど悩まなくて済まなくなります。
③認知的不協和
認知的不協和とは、矛盾する複数の認知を抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学の用語です。
例えば飽きてしまったドラマを最後まで見続けてしまうケースで考えてみます。
ドラマを見ようと思ったということは、そのドラマに肯定的な自分がいたということです。
一方、飽きてしまって視聴をやめたい場合、そのドラマに否定的な自分がいるということです。
この異なる自分が存在しているとき、認知的不協和の状態になっています。
人は認知的不協和の状態にあるとき、その状態を解消しようとします。
例えばドラマを見ようとした自分の判断が誤っていたと考えれば、ドラマに対する認知的不協和は解消されることになります。
しかし、この判断を肯定したくない場合、「実はこのドラマは面白いんだ」などと思い込むことで、ドラマを視聴し続けてしまうことになります。つまり、ドラマに対して肯定的な自分にすることで、認知的不協和を解消しようとします。
なお、このドラマが120分で、飽きたタイミングが最初の10分だとしましょう。この場合、視聴をやめれば残りの110分を無駄にしなくて済みます。
ところが、最初の10分を無駄にしたくないという考えによって視聴を続けた場合は、「コンコルド効果」という別の心理現象が生じています。
以下、コンコルド効果の詳細記事です。気になる方は読んでみてください。
認知的不協和はさまざまな心理現象に関わるので、簡単に概要を理解しておくことをおすすめします。
2.一貫性の原理に関する心理現象
以下に一貫性の原理に関する心理現象を3つ紹介します。中には、相手を騙すことに使われるような手法もあります。
自己防衛のために理解するようにしましょう。
ここでも、「社会性」「合理性」「認知的不協和」を意識すると理解しやすいと思います。
①イエスセット
イエスセットは、相手が「イエス」という回答を繰り返すことによって、その後の要求や提案に対する抵抗を減らす効果があります。
「イエス」と言わせたい本命の質問の前に、必ずイエスと答えるだろう質問を繰り返して「イエス」を積み重ねることで、本命の質問に対する「イエス」を引き出す手法です。
イエスセットを使ったやりとりの一例を示します。
- Aさん:1分ほどお時間をちょうだいしてもよろしいでしょうか?
- Bさん:はい。
- Aさん:今、スマホの新規プランの案内をしておりまして、スマホは普段お使いですか?
- Bさん:はい。
- Aさん:スマホはiPhoneをお使いですか?
- Bさん:はい。
- Aさん:それでしたらお得なプランがありますので、案内だけさせてもらってもよろしいでしょうか?
- Bさん:はい。
このように、イエスセットは相手の「イエス」を積み重ねていく手法です。
人が「はい」と返答する行動を取ったがために、一貫して「はい」を繰り返してしまうというものです。
要は断りづらくなったということです。
②フット・イン・ザ・ドア・テクニック
フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは、最初に小さな要求を承諾させてから段々と要求を大きくしていき、最終的に目標である要求を承諾させる手法です。
一例を示します。
- Aさん:すみません、今、交通安全のキャンペーンをやっていまして。この安全運転のステッカーを車に貼ってもらえませんか?
- Bさん:わかりました。
- Aさん:もしよろしければ、交通安全の看板を庭に立てさせてもらってもよろしいでしょうか?
- Bさん:仕方ないですね、協力しましょう。
これは実際に行われた実験です。
いきなり庭に看板を立てる要求をした場合、承諾率は約17%でした。
しかし、ステッカーを貼る承諾の後に看板設置のお願いをしたところ、承諾率が約76%に跳ね上がったというものです。
このように、小さな要求からスタートすることで、本命の大きな要求の承諾を取り付けることを狙った手法が、フット・イン・ザ・ドア・テクニックです。
一般的に営業などで、イエスセットとともに併用されやすい手法です。
③ローボールテクニック
ローボールテクニックとは、最初に好条件だけを提示して相手の承諾を得た後、悪条件を追加したり好条件を取り除いたりする交渉術です。
ほぼ詐欺の手法です。居酒屋のキャッチや悪徳セールスなどで用いられる手法です。
一例を示します。
- Aさん:こちらの商品、今だけ半額ですよ!めったにないチャンスです、いかがですか?
- Bさん:めちゃくちゃ安いですね、買いたいです。
- Aさん:大変申し訳ございません、お客様。あいにく在庫を切らしていまして。
- Bさん:はぁ…
- Aさん:偶然、これより上位機種になるんですが、一つだけ在庫がありまして。こちらの方が人気がありますがいかがですか?
- Bさん:(ぐむむむ…断りづらい…)
いかがでしょうか。
このように、一度承諾した手前、「ノー」と言いづらい人間の心理を悪用しているのが、ローボールテクニックです。
①、②と異なり、最初の条件が実際は存在しないものであるため、最もたちが悪い手法です。
3.まとめのお話
一貫性の原理とは、人が自分の行動や態度を一貫させようとする心理的傾向のことです。
この、一貫性を保ちたいという人間の心理を利用したテクニックに、「イエスセット」「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」「ローボールテクニック」の3つがあります。
そしてこれらは、営業や恋愛術として、相手を取り込むテクニックとしてよく紹介されるものです。
心理学のテクニックには、うまく活用することで相手との信頼性を構築できるものがいくつもあります。
一方で、相手との関係性を破壊しうるものがあるのも事実です。
心理学を学ぶことは、人間関係に応用できるだけでなく、悪用から身を守ることにもつながります。
関連記事や参考記事に気になるものがありましたら、ぜひいろいろ読んでみてください。
今回は以上です。
コメント