多元的無知とは?具体例とともに難解用語をわかりやすく解説

心理学の応用
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こまっ太郎
 

多元的無知とは?
多元的無知の具体例は?
多元的無知が難しすぎて理解できない。

そんなあなたに向けた「多元的無知」を「具体例」とともにかみ砕いて解説した記事です。

本記事を読むことで、傍観者効果やいじめとの関連、偽の合意効果についても理解することができます。

✓本記事のテーマ

多元的無知とは?具体例とともに難解用語をわかりやすく解説

✓本記事でわかること

【多元的無知の詳細解説】多元的無知とは/傍観者効果とは/多元的無知の具体例/偽の合意効果とは

多元的無知を具体例とともに詳しく解説

1.多元的無知とは?

集団において大多数の人間が、「自分はある事実を信じてはいないが、自分以外の人間はその事実を信じている」と思い込んでいるという現象です。

「誰も信じていないが、誰もが『誰もが信じている』と信じている」ということである。そのように説明している記事(wikipedia)もありました。

はぁ?何言ってるのこの人?

そう思った人もいるでしょう。その気持ち、理解できます。多元的無知は説明が少し難しい言葉です。

まずは、「多くの人の思い込み」が関係していると大づかみしてください。

一つ、多元的無知の例をあげます。

多元的無知の具体例

ある部屋にあなた以外にA、Bの二人がいるとします。

その部屋に煙が漂ってきました。

心の中であなたは「火事かな?」と思いました。

しかしAとBは慌てる様子を見せません。内心は慌てているのかもしれませんが、表面上はそうは見えません。

なのであなたは「AもBも火事だと思っていないんだ」と思い込んでしまい、避難しようとはしませんでした。

実はAもBもあなたと同様、「火事だと思ったけど他の人の反応から火事ではない」と思い込んでいました。

これにより、三者全員が火事ではないと思い込み、避難しようとしませんでした。

災害時に避難が遅れて事故が起きてしまう典型的な心理状態です。

この例だと、あなたもAもBも、安全だとは信じていませんでした。

しかし自分以外の反応から、「周囲は安全だと信じている」と思い込みました。

つまり全員が思い込みをしたということです。

これが多元的無知の構造です。

多元的無知は、心理学者であるフロイド・ヘンリー・オールポートと彼の教え子2名によって考えられた概念です。

「沈黙の螺旋」の考案者で知られるドイツの政治学者ノイマンは、メディアバイアスが多元的無知につながると主張しています。

メディアに対する誤解などのバイアスが、多元的無知を引き起こすことがあるということです。

2.傍観者効果とは?

多元的無知は傍観者効果の要因となる現象です。

傍観者効果とは、傍観者の心理であり見て見ぬふりの心理です。

1964年のニューヨークで、キティ・ジェノヴィーズ事件という婦女殺人事件が起こりました。

被害者であるジェノヴィーズの叫び声によって38名が犯行を目撃していたにも関わらず、犯行が続いた30分以上に渡って誰も警察に通報をしなかったのです。

この事件に着想を得て提唱されたのが傍観者効果ですが、多元的無知が関連しています。

この事件では、「誰も通報しないから事件では無いのかもしれない」という思い込みが一部住人で発生しています。

3.多元的無知の具体例

①裸の王様

アンデルセンの童話『裸の王様』でも多元的無知が起きています。

王様の新しい服は愚か者には見えないという設定で作られています。

もちろん、存在しない服なので誰にも見えるはずはないのですが、自分の愚かさが露呈することを恐れて誰も王様が裸であることを言い出すことができません

誰も言い出さないので、自分には見えないにもかかわらず、「周りの人には見えるものだから実際に存在する服なのだ」と誰もが思い込んでしまっている。

まさに自分だけが誤っていると勘違いしてしまう、多元的無知の好例といえます。

②いじめ問題

例えばクラスでいじめが起きたとします。

その場面を見て悪い事だと思う一方で、孤立を恐れて反対することができない。

周囲も同じ状況で、やはり誰も反対する者がいない。

次第に、周囲はいじめを容認していると思い込み、自分もいじめに加担するようになってしまう。

あるいは、周囲が反対の意見を述べない程度のことだから気にする必要は無いと無理矢理自分を納得させ、見て見ぬふりをしてしまう。

典型的な傍観者効果であり、多元的無知が働いている例です。

いじめについては、孤立を恐れて少数派が無自覚的に沈黙するという「沈黙の螺旋」が関係する場合もあります。

くわしくは以下の記事をご覧ください。また、いじめについて言及した記事も載せておきます。

・沈黙の螺旋の記事一覧はこちら
・いじめに関連する記事一覧はこちら

③サイバーカスケードと炎上事件

特定のウェブ上での一部の先鋭的な意見が多数派であるという思い込みを引き起こすことがあります。

サイバーカスケードと呼ばれる問題で、典型はネット上の炎上問題です。

ネント上の炎上問題は、一部の攻撃的な意見が連投されることにより、ネガティブな印象形成がなされていきます。

炎上している人物を擁護すると自身が炎上するリスクがあるため、次第に擁護者の意見が減っていきます。

このようなケースでも、仮に自分が正しくないと思ったとしても、一部の目立った意見が多数派であると思い込む場合があります。

④アメリカの人種差別

アメリカの人種差別が多元的無知によって拡大したと考える意見があります。

差別的な政権に否定的な人も、多数派である政権の政策に同調してしまったという見方です。

なお、アメリカの黒人差別は「黒人はスト破りをする」という偏見から生まれたと考える意見もあります。

くわしくは以下の記事をお読みください。

⑤学生の大量飲酒

学生の大量飲酒も多元的無知の例としてよくあがります。

例えば飲み会で一気飲みをして盛り上がっている場面を想定してみましょう。

その光景を見ると、あまり良くないものと思います。一方、周囲では盛り上がっている人がいます。

なので、「周りの人はこの光景を好意的に捉えている、だから楽しいものなんだ」と思い込んでしまいます。

これらの問題は、ギャンブルや嗜好品の摂取でも起こり得る問題です。

⑥コロナ禍のマスク

マスクをしていてもコロナ感染を抑制できないと思いつつも、周囲が当たり前のようにマスクをしているため、マスクをすることが正しいものだという思い込みがコロナ禍では生じていました。

この記述は、マスク着用の是非を問うものではありません。

マスクをしなくても良いと思った人が、周囲の様子から「多くの人間がマスクを必要としている」と思い込んだということを、多元的無知の例であるとして示したに過ぎません。

⑦残業問題

過剰なサービス残業の問題は、仕事が過多であること以外にも原因があります。

本人が望まない”付き合い残業”のケースです。

本人が残業を必要としていないのに、周囲が残業している場面を見て、「残業を肯定している空気なんだ」と勘違いして自分も無駄な残業をしてしまう。

実際は同調圧力が働いているだけで、周囲の残業している人たちも実際は残業をしたくないと思っている。

このようなケースです。

4.偽の合意効果とは?

偽の合意効果(フォールス・コンセンサス効果)とは、自分の考え方を他人に投影する心理傾向です。

他人の考え方を自分に投影する多元的無知と真逆の側面があると考えることができます。

偽の合意効果は以下の記事をご覧ください。かなり詳しく解説しています。

今回はここまでです。

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