パブロフの犬の実験のメカニズムを知りたい。
パブロフの犬に関連するアーノルド坊やの実験ってなに?
日常に使える心理学のテクニックを教えて!
そんなあなたに向けた記事です。
パブロフの犬の実験はめちゃくちゃ有名な実験ですが、そのメカニズムまでは知らない人も多いのではないでしょうか。
本記事では関連実験の他、日常への応用例も紹介しています。実験の再現映像もあります!
5分ぐらいで読めると思いますので、最後までお付き合いください。
✔本記事のテーマ
【禁酒・禁煙・不眠解消に応用可】パブロフの犬の実験をわかりやすく解説!【面白い心理学】
✔本記事でわかること
- パブロフの犬の実験とは?
- アーノルド坊やの実験
- パブロフの犬の日常への応用
1.パブロフの犬の実験とは?
①実験の着想
1902年のこと、帝政ロシア・ソビエト連邦の生理学者イワン・パブロフは犬を使って唾液腺の研究を行っていました。
その研究中、飼育係の足音を聞いた犬の唾液量が増えている事を発見し、そこから条件反射の実験の着想を得ました。
実験内容をざっくりと説明すると、犬にエサを与えるときに鈴の音を聞かせることを続けた結果、鈴の音を聞かせるだけで犬の唾液量が増加したことを確かめたというものです。
実験内容の詳細は後述するとして、まずは実験を正しく理解するために「条件反射」について説明します。
※メトロノームを使って実験をした説もありますが、ここでは鈴で解説します。
※生物学の反射と心理学の反射は「=」ではないです。
②条件反射とは?
条件反射は、ある経験や訓練を通じて、後天的に獲得する反射行動のことです。
一方、無条件反射は、生まれつき持っている反射行動のことです。本能に基づいていると考えるとわかりやすいかもしれません。
【条件反射の例】
- パブロフの犬が鈴の音を聞くと、唾液が出る。
- 梅干を思い浮かべると、唾液が出てくる。
鈴の音を聞くとおいしい思いができる、梅干しを食べるとすっぱい味がするという学習を通じて、鈴の音を聞く、梅干を想像するだけで唾液が出るようになるということです。
生まれつき犬は鈴の音を聞いてもえさを連想しませんし、例えば赤ちゃんに梅干しを見せても酸っぱいとは思わないですよね?
【無条件反射の例】
- 熱いものに触れると手を引っ込める。
- とがったものが視界に入ったから目をつぶった。
無条件反射が、一般的な生物学においての反射に近い意味を持つと考えるとわかりやすいです。
そして、条件反射は条件刺激、無条件反射は無条件刺激によって引き起こされると考えます。
ちょっと難しいですね。パブロフの犬の実験を例に説明します。
犬にえさを与えると、唾液が出ます。無条件反射(ふつうの反射)なので、えさが無条件刺激です。
鈴の音を聞くと、唾液が出ます。条件反射(学習による反射)なので、鈴の音が条件刺激です。
さらに掘り下げますね。
条件反射は条件刺激、無条件反射は無条件刺激によって引き起こされると考えます。
そして、条件刺激はもともと中性刺激だったものが学習によって変わったものです。
本来、犬に鈴の音を聞かせても唾液は出ません。なので、鈴の音は本来、反射を引き起こしません。
ところが、えさを与えながら鈴の音を聞か続けると、鈴の音だけで唾液が出るようになります。
なので、中性刺激だった鈴の音が学習によって、条件刺激に変わったと考えます。
なお、この学習を「古典的条件付け」と呼びます。「レスポンデント条件付け」や「パブロフ型条件付け」ということもあります。
以下にまとめますね。すでに理解した方は飛ばして次の章に進んでください。
- 犬に鈴の音を聞かせても、鈴の音は中性刺激なので反射は起きない。
- 犬にとってえさは無条件刺激なので、えさを与えると無条件反射として唾液が出る。
- 犬に中性刺激である鈴の音と、無条件刺激であるえさを同時に与えるという条件付けを行う。
- 鈴の音が中性刺激から条件刺激に変わる。
- 条件付け後、犬に条件刺激となった鈴の音を聞かせると、条件反射として唾液が出るようになった。
この、「なった」という感じが端的に条件反射を表しているかもしれませんね。
2.アーノルド坊やの実験
「アーノルド坊やの実験」を通じて、「パブロフの犬の実験」の復習してみましょう。
アーノルドという1歳足らずの幼児を対象とした、今では残酷とされている実験です。
実験は、ネズミとともに大きな音(金属で物を叩く音)を聞かせ続けた結果、アーノルド坊やはネズミを見るだけで怖がるようになった、というものです。
前章と同様、以下にまとめます。アーノルド坊やは長いので、幼児とします。
- 幼児にネズミを見せても、ネズミは中性刺激なので反射は起きない。
- 幼児にとって大きな音は無条件刺激なので、大きな音を与えると無条件反射として怖がる。
- 幼児に中性刺激であるネズミと、無条件刺激である大きな音を同時に与えるという条件付けを行う。
- ネズミが中性刺激から条件刺激に変わる。
- 条件付け後、幼児に条件刺激となったネズミを見せると、条件反射として怖がるようになった。
以上、何となくは理解していただけたでしょうか。
3.パブロフの犬の日常への応用
最後に、日常生活に条件付けを応用した例を紹介します。
①ペットのしつけを行う
- えさを与えるときに鈴の音を聞かせ続ける。やがて、鈴の音を鳴らすだけで動物がやってくるようになる。
- 動物が粗相をするたびに「ノー!」を言い続ける。やがて「ノー」を言うだけで、粗相を抑制できるようになる。
- 動物がおびえているとき、なでてあげる。やがて、なでるという行為で落ち着くようになる。
よく語られるしつけの方法ですね。ここではしつけの方法の是非は問いません。
②子供に勉強を促す
- 勉強がうまくできたら、おやつなど子供が喜ぶものをあげる。やがて、勉強をすると良いことが起きると思うようになる。
物で釣るのが嫌な場合は、褒めるでも良いでしょう。褒めるという行為は自己肯定感を上げるとされています。
③子供の苦手な食べ物を克服する
- 苦手なニンジンが食卓に並ぶときは、いつも好きなハンバーグの横に乘っている。次第にニンジンの苦手意識が薄れていく。
苦手なニンジンをみじん切りにしてカレーの中に入れてわからなくするやり方は、条件付けとは無関係の方法です。
④禁酒・禁煙をする
- お酒を飲みたくなったら「醜い酔っ払いの姿」、「二日酔いの自分」などをイメージする。やがて、お酒が嫌なものに思えてくる。
- お酒が飲みたくなったら、「頭脳明晰で勉強をしている自分」、「夕食後の時間を有効活用できている自分」などをイメージする。やがて、お酒を飲まなければ素敵な時間を過ごせると思うようになる。
経験的に後者の方が効果があると感じています。禁煙セラピー、禁酒セラピーなどを読むのもおすすめします。
⑤不眠を直す
- 寝るときはストレッチをしたり、好きな音楽を聴いたりする。やがて、それらの行動が眠気を誘うようになる。
いわゆる入眠儀式ですね。これ、セットで朝起きてからのルーティンも考えておいた方が良いですよ。
⑥試合前にルーティンをする
- 例えば野球で打席に立つとき、サッカーでPKを蹴るとき、動作前に決まったルーティンを行う。そのポーズをすることで、集中モードに入れるようになる。
イチロー選手や五郎丸歩選手は集中が必要な場面でルーティンを行うことが有名でしたね。
女子マラソン選手の高橋選手も試合前にいつも決まった音楽を聴いていたというのも有名な話です。
⑦習慣づけを行う
- どうしても運動不足解消をしなくてはいけないとき、その後に懇親会があるサークルなどに参加する。やがて、懇親会が楽しみなり、運動イベントの参加自体が好きになる。
- 朝活をするとき、お気に入りの店員がいるカフェにいく。やがて、店員を見るついでにカフェで勉強するようになる。
以上、条件付けを応用した例のご紹介でした。これらの例には様々な心理効果が複合的に応用されています。
心理学についての記事はたくさん関連記事にあるので、ぜひ気になるものがあったら読んでみてくださいね。
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