【アンカリング効果とマーケティング】スーパーや飲食店で見られる販売戦略とは?

心理学の応用
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あああ

アンカリング効果とは?
スーパーや飲食店におけるアンカリング効果の事例を知りたい。

そんなあなたに向けた、「アンカリング効果」と「スーパーや飲食店」に特化した記事です。

一部、不動産や100均、カウンセリングやコンサルの事例も紹介しています。

今回の記事は小売業を営まれている方はもちろんのこと、仕事で営業をしている方にも応用できる事例がたくさんあるかと思います。

ぜひ、読者様のビジネスにお役立ていただければ幸いです。それでは始めます。

✔本記事のテーマ

【アンカリング効果とマーケティング】スーパーや飲食店で見られる販売戦略とは?

✔本記事でわかること

【アンカリング効果と販売戦略】スーパーでの事例/飲食店での事例/その他の事例/販売業へ取り入れる手順

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アンカリング効果とスーパーや飲食店の販売戦略

1.アンカリング効果

アンカリング効果とは、最初に提示された数字などの情報がアンカー(船をつなぎとめる錨)となり、その後の判断に影響を与えるという心理効果です。

アンカリング効果は典型的な認知バイアス(偏見や先入観、固定観念、誤謬などの認知の歪み)です。

アンカリング効果には以下の2つの側面があると考えると、この後の内容が理解しやすいと思います。

①最初に提示した数字がその後の判断基準になる

「100万円の商品を80万円」

最初の100万円が判断基準となり、その後の80万円が安く感じられます。

②無意識的なアンカーが判断基準になる

「コーヒー一杯300円」

ブルーマウンテンなどのややお高いコーヒーが好きな人には安く感じ、缶コーヒーを普段飲む人には高く感じます。

このように、人それぞれアンカーとなる情報が異なります。

2.スーパーでのアンカリング効果

①ペタペタ貼られたシール

400円の商品を300円に値引く場合、以下のどちらが効果的でしょうか。

・400円のシールの上に300円のシールを丁寧に貼る
・400円のシールが見えるように300円のシールを貼る

アンカリング効果の効果があるのは後者です。

衣料品のセールでもだいたい、値引き前のシールが残されています。安物店ほど尚更です。

値引き前の金額を強調するのは、安さアピールの典型的な手法です。

②目玉商品のPOP

魚や果物のコーナーを思い浮かべてください。

「今だけ3000円、静岡産高級うなぎ!」

このような目立つポップがあったとしましょう。何なら調理例がわかる料理の写真など目の引く写真も近くに並んでいるとします。

不思議なもので、買う予定が無い価格帯の物でも、「どんなものなんだろう」と思って見に行ってしまうことがあります。

実際に売り場を見ると、その他にも中国産の安い鰻や、様々な切り身、肝(きも)などが並んでいます。

そして3000円と比べると随分と安いので、ついついお得に感じて手に取ってしまいます。

この場合、「静岡産高級うなぎ」はおとりのポップです。まんまと釣られたわけです。

③グラム単価表示

「800gで1200円のお肉」

そこそこの金額です。

「100gで150円」

何となく安く感じます。

このように、それなりの価格の物を安く見せるために、グラム単価表示をすることがあります。

Amazonでも商品や飲料、医薬品などはこのような表示をしています。

これは、商品比較をしやすいという側面もありますが、安さを際立たせるための戦略でもあるのです。

④3種類の寿司価格

「1800円18貫」「1200円10貫」「900円6貫」

このような感じです。だいたい、価格が上がれば1貫あたりの値段が下がるように設定されています。

1貫あたりを判断基準にする人は、食べ切れない量なのに1800円のものを買ってしまうかもしれません。

値段を気にする人は900円の商品を選びそうですが、何となく割高な感じがするので1200円を選びがちです。

みなさんはうなぎ屋の松竹梅戦略をご存じですか?

「松5000円」「竹3000円」「梅2000」円のような価格設定にしておくと、「竹」を買いやすいというものです。

「松」は高いから避け、「梅」はプライドが許さないから避ける。このような心理が働いています。

スーパーに関してはあまりプライドを考えないので、単純に高い物を避ける傾向が強くなります。

「1800円18貫」「1200円10貫」「720円6貫」

なので、このような価格設定にすると、720円の商品の売れ行きが伸びだします。

1貫あたりを基準に考えるか、合計金額を基準にするのか。どちらをアンカーにする人にも対応した販売戦略です。

⑤やたら強調される小売価格

「メーカー希望小売価格」「定価」「当店通常販売価格」「他店販売価格」などなど…

スーパーや家電販売店で見られがちなPOPです。安さを魅力と感じさせるための方法です。

3.飲食店でのアンカリング効果

①メニュー表の価格表示

松阪牛のハンバーグ5000円
伊勢海老のエビフライ5000円
子羊のローストキャビアぞえ5000円
本日の新鮮サラダ2000円
蟹クリームパスダ1500円
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このようなメニュー表示では、ついつい新鮮サラダを頼みがちです。

サラダで2000円ですから、十分高く感じますが、5000円と比べると随分安いです。

ハンバーグやエビフライなどが目玉商品だからリストの上にきている可能性は否定できませんが、「おとり商品」の可能性が高いです。

お店側も売れたらラッキーぐらいに思っている程度の商品です。あるいは実際に注文すると「あいにく食材をきらしていまして…」などの言い訳が始まる場合もあります。

全てのお店がこのようなメニュー表示をしているわけではありませんが、飲食店向けのコンサルはアンカリング効果を紹介しがちです。

次に飲食店にいった場合はメニュー表を見ながら「どこかにアンカリング効果はないかな?」「このお店はアンカリング効果を使っているかな?」など考えてみるのも面白いでしょう。

②飲食店でも使われるグラム表記

ハンバーグやステーキでありがちです。

上質の商品をA、そうでない商品をBとしましょう。

「A:100g3000円」
「B:100g1000円」

単純にこのように並べて客のアンカーに商品選択をゆだねる方法もありますが、以下のような書き方がされている場合もあります。

「A:期間限定!200g3000円」
「B:100g1000円」

このように増量してお得感を演出しつつ高い方に誘導するPOPを見た場合は、アンカリング効果を狙ったものであると考えて差し支えないでしょう。

③スタバの店内

アンカリング効果でスタバが引用されることは多いです。

まずはサイズバリエーション。サイズが大きくなるほど明らかに割安です。私もだいたいでかいサイズを買いがちです。

今回注目したいのは、金額面ではなくその他の要素です。

まずは店内の内装です。同価格帯の競合店と比べて突出して内装にお金をかけている印象です。

スタバには「高級そうだから」「優雅な気分になりそうだから」といった理由で利用している層が一定数います。

twitterなどのSNSでは、詐欺目的や勧誘目的の自称お金持ち、成功者のアカウントが多数ありますね。

そういったアカウントでは日々の投稿でスタバアピールをしているケースが思いのほか多いので、一度調べてみてください。

中には、「●●になれば、毎日スタバで飲めるようになる!」などとプロフィールに堂々と書いているアカウントも見つかってなかなか面白いですよ。

なぜ、このようなアカウントがあるかというと、「スタバは金持ちの象徴」「スタバにいくと優越感に浸れる」と考える層が一定数いるからです。

なお、スタバそのものが一つの価値基準になっているように感じます。

執筆している本日、5名の人に「コーヒーショップで頭に思い浮かぶお店は?」と聞いてみました。

全員、スタバと答えていましたね。そのうち3名は、スタバユーザーでは無かったです。

4.不動産・コンサル・100均でのアンカリング効果

①不動産

私は何度も何度も引っ越すので、不動産はけっこうな回数、利用させてもらっています。

ただ、けっこうな営業マンが絶対にOKが出ないのに最初に高額物件を紹介してくるのが気になっています。

地域密着型の不動産より大手の方が多いですね。おそらく、そう指導されているのでしょう。

物件サイトでも、希望価格より1~2万円高い金額の好物件が広告として表示されることが多いです。

②コンサルやカウンセリング

見積もり書において、「10万円→5万円」のようになっているものがあれば、その営業マンはアンカリング効果を知っている可能性が高いです。

アンカリング効果の応用として紹介されるテクニックはいくつかあるのですが、その例の一つとして頻繁に紹介されるのが見積書への応用です。

コンサルやカウンセリングなど信用第一の職業でそのような手法をするとは考えづらいのですが、相場がわからないから見積もり書を工夫することで高い料金を払わすことができる。

このように、見積もりへの悪用を推奨するマニュアルが存在しているので本当に注意してください。

③100均

店内がすべて100円で統一されていると、どういう心理が働くでしょう。

その一つは、「すべての商品が同じ価値だ」と考えるというものでしょう。

はっきりいうと10円以下の価値の商品が100均には並んでいます。ですが、無意識的に他の商品と同価値に感じるため、カゴにどんどん商品を入れてしまいがちです。

また、スーパーなどで安い日用品を買うときに、「同じような商品を100均で買えないかな…」などと考えたことはありませんか?

100均という言葉が標準の商用ワードになっているように、100均が購入判断の基準になっていることがあるのです。

5.販売業にアンカリング効果を取り入れるための手順

何を商売にするのかという手順は割愛します。

①顧客層を調べる

まずはターゲットとなる顧客の性質を調査します。

アンカリング効果はすべての販売業で取り入れることはできません。

例えば高級ブランドを扱う場合、安く見せると逆効果です。

高級、高価値であることに意味を見出す層がいることを忘れてはいけません。

言うまでもなくここでの調査は、顧客が安さを求めているかどうかの調査になります。

また、どの程度の金銭感覚を持っているかの調査が必要です。この調査結果が価格設定の肝となります。

ここで問題がある場合は、アンカリング効果を取り入れることを断念してください。

あるいは事業を断念してください。設計が悪い可能性があります。

缶コーヒーで良いと思っている層にスタバの商品を売り込んでも売れないですよね。

②売りたい商品の設定と商品リストの見直し

すでに事業を始めている場合は、商品をリスト化してください。

そして、類似商品ごとにグループ化し、さらに金額が高い順に並べます。

次に、グループの中で、どの商品を売れ筋商品にしたいのかを考えます。

この商品が最も高額な場合は、さらに高額な商品をおとり商品として導入することを検討してください。

また、売りたい商品を高い金額と安い金額の類似商品と挟み込むなど、松竹梅効果の導入も検討してください。

③価格調査と価格設定

②とほぼ同時にやることになります。

まずは競合店の販売価格、メーカー希望小売価格などを調査します。

ネットショッピング店の価格調査も忘れてはいけません。

これらの調査で判明した金額より安く販売ができる場合は、調査した他店の金額などをアンカーとして利用できます。

価格調査や商品の再リスト化が終わったら、価格設定の調整を行います。

より売りたい商品が際立つ金額なのか、ターゲットの顧客層の視点にたって適正価格を設定します。

④検証

実際に売り上げに変化が生じたのかを検証します。

効果が見られない場合は、①~③のどこかに問題がある可能性が高いです。

調整して再設定、そして再検証が基本の流れになりますので、効果が出るまで①~④の手順を繰り返します。

必要に応じて第三者の意見を取り入れるなどもしてください。

6.注意点とまとめのお話

さて、今回はマーケティングにアンカリング効果を取り入れるという視点での解説記事でした。

今回はスーパーや飲食店を例に説明しましたが、その他の業種にも応用できる部分がいくつもあると思います。

参考になりましたら幸いです。

最後に、アンカリング効果は使い方を誤ると信用を失うという重大なリスクがあります。

また、法に触れるリスクもあるので注意が必要です。

以下、アンカリング効果のリスクに特化した記事です。ぜひ、読んでみてください。

今回はここまでです。

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