ローゼンハン実験とは?
面白い心理学の実験を知りたい!
誤診ってなんで起きるんだろう。
そんなあなたに向けた記事です。
本記事では2部構成のローゼンハン実験を簡潔に解説しています。5分もかからないので最後までお付き合いください。
✔本記事のテーマ
【誤診の心理学?】ローゼンハン実験をわかりやすく解説【面白い心理学実験】
✔本記事でわかること
- ローゼンハン実験とは?
【挑戦するローゼンハン、受けて立つ病院/実験の余波/先入観とバイアス】
ローゼンハン実験とは?
ローゼンハン実験は、アメリカの心理学者のデイビッド・ローゼンハンによって行われた、当時の精神障害に対する診断が有効であるかを確かめた実験です。具体的には「精神科医が正常な人と精神障害を持つ人を見分けることができるのか」を確かめた実験です。この実験は2部構成で行われました。
①ローゼンハン実験第1部
- 精神障害を持たない正常な男女8名(偽の精神患者とする)を精神病院に送り込んだ。
- 偽の精神患者は幻聴が聞こえるふりをした。
- 入院時の診断を受け、偽の精神患者は幻聴が治ったと病院に伝えた。
- しかし、偽の精神患者中7名が統合失調症、1名は双極性障害と診断され、長期の入院を余儀なくされた。
この実験により、偽の精神患者を精神科医が正しく見抜くことができないことが露呈しました。
さらに問題となったのは、多くの入院患者(実際の精神障害者)が偽の精神患者を、「偽物である」と気付いていたことでした。それにより、嫌がらせを受けた偽の精神患者がいたほどです。
ローゼンハンは、精神科医の診断や能力に問題があると主張しましたが、多くの精神科医から実験の信憑性について反論を受ける結果となりました。
そして、ある病院がローゼンハンの挑戦を「受けて立つ」と、名乗りをあげたのでした。
②ローゼンハン実験第2部
- 3か月にわたり、ローゼンハンが病院に偽の精神患者を送り続け、病院側が診断によって偽の精神患者を特定する実験を行った。
- 病院側は、3か月での来院患者193名のうち41名が、ローゼンハイが送り込んだ偽の精神患者であると診断した。
- しかし、ローゼンハンが送り込んだ偽の精神患者は0名であった。
この実験により、偽の精神患者を見抜くどころか、本当の患者を偽の精神患者と診断してしまうという新たな問題が露呈してしまいました。
③ローゼンハン実験の余波
ローゼンハン実験の結果は、1973年科学誌サイエンスにて、『狂気的な場所で正気であることについて(”On being sane in insane places”)』のタイトルで9ページに渡って掲載されました。
実験当時、アメリカの精神医学会ではDSMの第2版が使用されていました。
ローゼンハンの実験を受け、DSMの第3版より、明確な診断基準を設け、精神科医間で精神障害の診断が異なるという診断の信頼性の問題に対応する改訂がなされる結果につながりました。
④ローゼンハン実験から得られる教訓
ローゼンハン実験により、偽の精神患者だけではなく本当の精神患者に対しても誤った診断が行われたことが明らかになりました。このような誤った診断が起きた理由について、心理状態に関する要因が挙げられます。
まず、医師による先入観が考えられます。ローゼンハンの実験では、「この人は精神患者に決まっている」、「この人は演技をしているかもしれない」などの先入観が働きました。また、患者の人種や性別などの特定の属性に基づいて偏見を持ってしまうこともあります。これらの行為は、医療過誤につながる可能性があります。
また、診断方法そのものが誤ったものだったかもしれません。つまり、バイアス(認知の偏り、ゆがみ)の問題も考えられます。さらに、専門領域が狭い場合、特定疾患に偏って注意を向ける傾向があり、他の疾患の可能性を見落としてしまう可能性があります。
ローゼンハン実験で明らかになったように、医療従事者が持つ先入観やバイアスが、診断の正確性に影響を与えることがあります。この問題に対しては、診断の際に客観的な情報を集めることや、異なる専門家の意見を参考にすることが必要であるとされています。
そしてこれは、ビジネスや人間関係にも当てはまることです。先入観やバイアスの問題で、例えば部下を正しく評価できていない、家族への理解が低いなどが起きうるということです。
誤診を防ぐことと同様、客観的な情報の収集の他、マニュアルの見直し、第三者による評価を取り入れるなどが必要になってきます。
そう考えると、ローゼンハン実験は私達の日常に対して示唆に富むものであると言えるでしょう。
今回は以上です。心理学について学習すると、人間が陥りがちな心理状態などを知ることができます。関連記事に心理学の記事がいくつかあるので、気になったものをあわせて読んでみてください。
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