売り上げが上がらなくて困ったなぁ……
ビジネスに取り入れられる心理学のテクニックはないかな?
アンカリング効果ってよく聞くけど意味がわからないよ……
そんなあなたに向けた記事です。
✔本記事のテーマ
【売上アップ】アンカリング効果をビジネスに取り入れる【使える心理学】
✔本記事でわかること
- アンカリング効果とは?
- アンカリング効果の事例4選
- アンカリング効果の由来・有名実験3選
- アウトレットモールのビジネスモデルに見られる販売戦略
- うなぎ屋の「松竹梅」に見られる販売戦略
- アンカリング効果の注意点
1.アンカリング効果とは?
まずは質問です。どちらの方が売れやすいでしょうか。
商品A:この商品は30000円です!
商品B:この商品、定価10万円のところ、当店では32000円です!
正解はBです。
よく見かけるこのような商品表示には、アンカリング効果をねらったものが多数存在します。
アンカリング効果とは、人々が特定の情報に基づいて判断する際に、最初に提示された情報(アンカー)に影響を受ける傾向があることを指します。
冒頭の商品Bでは以下のようにアンカリング効果が発動します。
・10万円?この商品は結構高い商品なんだな。
・それなのに32000円?高額商品の割にめっちゃ安いじゃん!
アンカリング効果が発動しない例もあります。最終章、「アンカリング効果の注意点」で後述します。とても重要な内容ですので、最後までお読みください。
今回はアンカリング効果について、由来やビジネスの活用例など、解説していきます。
その前に、アンカリング効果の事例としてよく紹介される4つの例を記します。最も代表的な事例で、アンカリング効果の四大事例ともいえます。
2.アンカリング効果の事例4選
①価格表示への応用
まさに冒頭の例で、バーゲンセール、アウトレットモールなどでは特によく見られます。
割引前の価格が本来の定価ではないという、景品表示法に触れる販売事例も散見されるので注意が必要です。
②見積書への応用
例えばある商品の見積もり価格を10万円にしたい場合、見積書に「本来15万円のところを5万円割引した」とディスカウントしたことを明記するなどです。
①の事例を応用させた例です。
③遅刻したときに……
例えば仕事で30分遅刻しそうなときに、次のように報告したとします。
30分遅刻します!
すると、到着後、このように上司に思われるでしょう。
本当に30分も遅刻しやがって…まったくけしからん。
しかし、次のように報告したらどうでしょう。
45分遅刻します!
もしかすると次のように思ってもらえるかもしれません。
45分遅刻のはずが30分で来たのか!急いで来たのか、偉いぞ!
ただし、この方法が通じない場合もあるので注意が必要です。特に有能な上司ほど通用しません。以下に通用しない悲惨な例を示します。信頼関係がダダ下がりですね。
45分じゃなくて30分じゃないか。遅刻するどころか時間の見積もりもできないのか。私は45分遅刻すると思って待っていたんだぞ。私のスケジュールをなんだと思っている!
アンカリング効果を狙った報告だな。まったく姑息なやつめ。アンカリング効果を遅刻の言い訳に悪用するなんて有名な話なのに、私が知らないと思っているのか!
以下、色々な上司の特徴について書いた記事を紹介します。こちらも参考にしてください。
④投資判断への影響
ふたたび質問です。以下の投資商品Aと投資商品B、どちらを買いたいですか?発行枚数などその他の条件は同じであると考えてください。
商品A:三か月連続で下落し、現在3000円
商品B:三か月連続で上昇し、現在3000円
多くの人は商品Bを選ぶのではないでしょうか。
商品Aはもともと高い物なのに現在は3000円の価値しかない。このように考えるはずです。
さて、以降はアンカリング効果の由来や、その他の事例をもとにさらに深堀りしていきましょう。
3.アンカリング効果の由来・有名実験3選
①アンカリング効果の由来
アンカリング効果は、英語で「Anchoring Effect」と書きます。
アンカー(Anchor)は日本語で「錨(いかり)」を意味し、アンカリングは船の錨によって船を動かなくすることを意味します。
つまり、アンカリング効果は、何らかの影響で身動きが取れなくなる状態になるという意味合いを持つのです。
②アンカリング効果に関連する実験3選
以下、3つの実験を紹介します。できる限り短く要約しました。
ルーレットを用いた実験
- 10と65の数字しか止まらないルーレットを用意する。ただし、被験者はすべての数字が出ると思っている。つまり、細工されていることを知らない。
- 10の数字が出た人と65の数字が出た人をグループ分けする。
- それぞれのグループに、国連加盟国中のアフリカにある国家の占める割合が、自分の出た数字より大きいか小さいかを考えさせる。
- 10の数字のグループは中央値が約25%、65の数字のグループは約45%と考えた。
オークションによる実験
- ある商品のオークションを行う。被験者それぞれの社会保障番号の下2桁の数字を紙に書かせる。
- 商品に対して、自分の2桁の番号に相当する$を払うかどうかを考えさせる。
- 入札結果は、2桁の番号の数字が大きい人ほど、平均落札希望価格が明らかに高かった。
計算結果を推測させる実験
- 1×2×…×8を計算させるグループをAとする。
- 8×7×…×1を計算させるグループをBとする。
- 計算結果を推定させたところ、グループAは平均500程度、グループBは平均2000以上であった。
以上、すべての実験がアンカリング効果に関連しています。最初に提示された数字にいかに引っ張られた判断をするかがご理解いただけたと思います。
アンカリング効果は、特に数字情報が効果を発揮することも知っておきましょう。
4.アウトレットモールのビジネスモデルに見られる販売戦略
アウトレットモールでは以下のような販売戦略を採用しているケースがあります。
- 百貨店で定価販売のショップを開き、高級商品として認識させる。
- アウトレットモールで割引チケットを配って店内に呼び込む。
- 販売したい商品は軒並み、50~90%offとなっている。
- すべての商品が割引にはなっておらず、一部、定価表示の商品も展示されている。
このような販売戦略はご自身のマーケティングにも取り入れることができるのではないでしょうか。
ただし、一部のブランド品は割引によってマイナス印象を持たれることがあるので注意が必要です。
例えば高級なブランド商品。イメージが湧きづらい方は、ロレックスでもルイヴィトンでもよいので、ブランドとして広く認知されているものを頭に思い浮かべてください。
このようなブランドイメージが固まっている商品については、割引がむしろマイナス印象を与えます。
一定数、高級であることに意味を見出す層がいることを理解しましょう。そもそもブランド品を安く売りだすと、コピー品と疑われるのが関の山かもしれません。
5.うなぎ屋の「松竹梅」に見られる販売戦略
うなぎ屋さんの多くは、うな重をランクによって松竹梅に分けます。
うなぎの大きさによって分けることが多く、一般的には松ほど高く、梅ほど安く設定されます。
よく言われるのは、心理的に「竹」を買う人が多い、お店が一番売りたいのは実は「竹」だと言うこと。
「竹」は高いから避け、「梅」は安くてプライドが許さないから「竹」にしておこう。
例外はもちろんあるでしょうが、そのような傾向にあるのではないでしょうか。
ここにもアンカリング効果が働いていると推測されます。どの部分に働いているかは、ここまで読んでくださった方ならご理解いただけると思うので割愛します。
ここでは、アンカリング効果をご自身の販売戦略により効果的に取り入れるための手法をご紹介します。
- Bを売りたい商品とする。
- AはBより明らかに高く設定する。
- さらにBより安いCを用意し、Bに誘導する。
- ただし、Cがあまりに安いとCに誘導されるため、CはBよりわずかに安い価格に設定する。
以上、ビジネスに取り入れることができる戦略のご紹介でした。
6.アンカリング効果の注意点
さて、ここで冒頭の例にもどります。
質問です。どちらの方が売れやすいでしょうか。
商品A:この商品は30000円です!
商品B:この商品、定価10万円のところ、当店では32000円です!
正解はBでした。
ただし、正解が必ずしもBではないので注意が必要です。
①アンカリング効果を受け手が知っている場合は通用しない
このようなケースはアンカリング効果が発動しません。
上の例だと、複数商品を比較されておしまいです。
②ブランドイメージが固まった商品には通用しない
こちらは先ほど述べたので割愛します。逆効果になる商品群があることを理解しましょう。
③最も重要:景品表示法に注意!
最後に最も重要な点を述べて終わりにしたいと思います。
例えば上の商品Bのケースでは、「10万円」と「32000円」と、二重価格表示がされています。
二重価格表示は消費者庁によってルールが定められています。
もしこの「10万円」というのが事実では無く、不当な表示である場合は景品表示法に抵触することになります。
このように、心理学を応用した戦略は、活用ではなく悪用になっていないかを検証することが基本になります。
今回は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。以下、心理学テクニックの悪用対策の記事です。知識を増やして対策しておきましょう。
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