【刷り込みとは?】動物行動学者ローレンツの研究と心理学との関連

心理学の応用
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知りたガリお
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ローレンツの刷り込みとは?
ハイイロガンを用いた研究について知りたい。
刷り込みと心理学との関連を知りたい。

そんなあなたに向けた記事です。

コンラート・ローレンツは、20世紀を代表する動物行動学者であり、人間行動の研究においても重要な貢献をしました。

彼は動物の行動とその進化に関する研究で知られており、特に刷り込みという現象の解明に取り組んでいました。

ここでは、ローレンツの経歴からハイイロガンの研究、刷り込みの説明や心理学との関連性などを説明していきます。

ローレンツといえば『ソロモンの指環』が有名です。動物行動学の入門書ともいえる本なので、興味がある方は読んでみてください。

✔本記事のテーマ

【刷り込みとは?】動物行動学者ローレンツの研究と心理学との関連

✔本記事でわかること

【ローレンツの研究と刷り込みを理解する】ローレンツの経歴/ハイイロガンの研究/刷り込みとは?/発達心理学、社会心理学などとの関連

ローレンツの研究と刷り込みを理解する

1.ローレンツとは?

コンラート・ローレンツは、1903年にオーストリアのウィーンで生まれました。

彼は医学を専攻しましたが、動物学に興味を持ち、その分野での研究を進めていきました。

ローレンツの最も有名な研究の一つはハイイロガンに関するもので、孵化直後の視覚的刷り込みの現象を詳細に研究しました。

ローレンツは、孵化した直後のハイイロガンが最初に見たものを親と認識し、その親を後追いするという行動を観察しました。

2.ハイイロガンの研究と刷り込みとは?

刷り込みとは、生まれた直後の個体が特定の刺激に対して強い結びつきを形成し、その刺激に反応する行動が長時間に渡って持続する学習現象を指します。

もう少し簡単に説明すると、生まれた直後のごく短時間で覚えたことを、ずっと覚えているということです。

ローレンツは、この刷り込みという現象が生物の行動発達に重要な役割を果たすと考えました。

そこでローレンツは、刷り込みの研究として、ハイイロガンなどの鳥を用いて実験を行いました。

ローレンツは、孵化後すぐの鳥の行動に注目し、特に最初の数時間が重要であることを発見しました。

孵化した直後の鳥は最初に出会った物体や生物を親として認識し、その後はその親を追いかける行動を取りました。

ガンの仲間のヒナは、親鳥の後ろを後追いする習性があります。これは生まれながらに持った本能行動です。

実際は、生まれた直後は親の顔を知らないので、生まれた直後に見たものを親と認識します。

したがって、孵化直後にガチョウを見ればガチョウを親だと思い込むし、ローレンツが孵化を観察した場合はローレンツを親と思い込みます。

実際にローレンツを親と思い込んだハイイロガンがローレンツを後追いをするというほほえましい写真は、ネット検索すればヒットすると思います。

ところで、ローレンツは、刷り込みという現象を学習とは別の物であると考えていたようです。

通常、知能が発達していない段階で学習が成立するためには、一定時間繰り返しによる学習が必要であると考えられてきました。

しかし、孵化直後の鳥に見られる後追い行動は、一瞬で学習が完了しています。

しかも、それが長期間に渡って持続することから、一瞬の出来事が印刷されたかのようであるとし、ローレンツはこのような現象を刷り込み(imprinting)と名付けたのです。

また、ローレンツは刷り込みが一度形成されると、後から別の刺激を提示してもそれには反応しないことも観察しました。

このように、刷り込みは一般的な学習と異なることが多いため、ローレンツは刷り込みを学習と分けて考えていたのです。

3.刷り込みの応用

ローレンツの刷り込みの研究は、動物行動学や心理学の分野において重要な影響を与えました。彼の研究成果から得られた知見は、人間の行動や学習にも応用できるでしょう。

①発達心理学、子育て・教育との関連性

子どもの成長において、最初の経験や環境が子どもの将来の行動や認知の発達に大きな影響を与えることが知られています。

例えば、言語習得において、子どもが最初に接する言語環境や親の話し方が将来の言語発達に大きな影響を与えることが知られています。

また、社会的行動の発達においても、最初の経験や環境が重要です。

子どもが最初に接する主要なケアギバー(親や保育者)との関係性が、将来の社会的なつながりや対人関係の発達に影響を与えることが示唆されています。

人間の幼児期は周囲からの刷り込みが特に顕著な時期であり、最初に見た人や接する環境が、その後の行動や態度に大きな影響を与えます。

知らず知らずのうちに、子どもに悪い影響を与えている恐れがあります。例えば、散らかった家で育った子供は、知らず知らずに片付けが苦手な子供になる傾向があります。

子どもが低年齢であればあるほど、親や教育者は子どもに対する態度や接する環境に気を払うべきです。悪い影響を与える要素が子どもの周辺に無いか、注意深く観察しましょう。

また、刷り込みの理解は、心理療法やトラウマの治療にも役立っています。

過去の出来事や環境が個人の反応に与える影響を理解することで、適切なアプローチや治療方法を選択することができるでしょう。

②社会心理学、マーケティングとの関連性

刷り込みの理論は、マーケティングの分野でも応用されています。

刷り込みの典型的なものはサブリミナル効果でしょう。なお、日本はサブリミナル効果を利用した広告を1999年に全面禁止にしていますので、ここでの言及は避けます。

いずれにしても、人々の購買行動には最初に接触した情報が大きな影響を及ぼします。

マーケティングの視点からは、商品やブランドが顧客の意識に刷り込まれるような広告やプロモーション戦略が重要となります。

例えば、特定の音楽やイメージを使用することで、製品やサービスに対する好意的なイメージや関連性を刷り込むことができます。

最初の情報によって影響が与えられる代表的な心理効果に、初頭効果、ハロー効果、アンカリング効果があります

これらの効果をマーケティングに取り入れるのも一つの方法でしょう。

以下にこれらの心理効果に関する記事を載せておきますので、あわせてチェックしてみてください。

今回は以上です!

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